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「ウンケーからウークイまでの間」

「ウンケーからウークイまでの間」

「ウンケーからウークイまでの間」

 ウンケー(お迎え)からウークイ(お送り)までの間(旧暦7月13日~15日又は16日)は、ご先祖様がこの世に滞在する時間であるということを子供のころから教えられてきた。そのせいか、今でもその間は、家のなかにいてもどこにいても、何か普段とは違う感覚を覚える。近くに身近な誰かがいるような感覚とでもいおうか。
今年は、お墓の掃除には行けなくて、また親戚まわりも特にしなかったが、ウンケーにお線香を焚き、そしてウークイではちょうちんを持ち、ご先祖様をあの世にお送りした。
わずか3日間ではあるが、沖縄では、ご先祖様をこの世に接待するという1年のなかでも重要な時間であり、その前準備も含めて何かと忙しくなる。宗教上の違いや個人的信条の下に、旧盆には参加しないという人も当然いるにはいるのだが、大半の人は旧盆の行事に何らかのかたちで参加している。また生活の拠点が県外にある人でも、お正月には帰郷できずともお盆に帰郷する人は多い。
ところで、旧盆は普段の暦とは違う旧暦を採用しているせいか、ウンケーからウークイまでの間、暦や時間について混乱することがある。本土で生活していた一時期、お盆が毎年決まった日に行われる本土に対し、毎年日にちの変わる沖縄の旧盆との違いを尋ねられ、うまく説明できなかったことを覚えている。
最近ようやく、日本のお盆の時期は大き3つあることを知った。もともとは、現在の沖縄同様、必ず満月日となる旧暦の7月15日を中心に行われていたらしいのだが、明治六年(1873年)に新しい太陽暦が日本において採用されたのを機に、明治政府は、全国一斉に新暦の7月15日を新盆とするよう試みた。しかし、当時の農家にとっては一年で最も忙しい時期であったらしく、その日からひと月遅らせた8月15日を「月おくれ盆」としたとのこと。現在はこの月おくれ盆(8月13~16日)が日本では大半を占めているという。
当時の明治政府の思惑通りに新盆に統一できなかったのは、各地方に残る伝統行事の関係や、特に沖縄においては、1879年の琉球処分前の複雑な情勢もあったのだと思う。
新、旧、月おくれ、とお盆の時期の違いを不便に感じたこともあったが、事情を知ってからは、このままでいいと思うようにもなった。
お線香の香りと煙が身近になる旧盆の時期、特に、この世の時間とあの世の時間が重なっているに違いないウンケーからウークイまでの間は、やはり何か普段とは違う感覚が続く。旧盆中、先祖の魂を供養するというエイサーの太鼓の音を遠くに聞きながら、その思いを強くした。(T)

 

新報リビングニュース週間かふう「うちなあ点描」