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「正月のアイスクリン」

「正月のアイスクリン」

「正月のアイスクリン」

 正月ドライブの途中。初詣での歩行者と車、そして露店でにぎわう普天間宮近辺を通り抜けた辺りは、キャンプ瑞慶覧に両側を挟まれた国道330号線。キャンプ内に立つ星条旗と日の丸の旗がまぶしい。その道路沿いでアイスクリン屋台に久しぶりに出会った。初詣での露店の連なりから大分離れた場所にあるのと、こんな寒い時期にアイスかと不思議な感じはしたが、ちょうど腹を空かせていたということもあり、車を降りた。まあ、寒い時期に冷たいアイスというのも通ではないかと。
屋台のつくりは必要最小限の簡素なもので、青と白の縞(しま)々パラソル、大きく文字の描かれた保冷庫、事務用具などを収納できる机に、その椅子といったところ。それから女子中高生の売り子さん。気になる味のほうは、アイスクリームとシャーベットの中間のようなもので、懐かしい味がして、老若男女、出身いかんによらず人気があるようだ。地元情報誌以外にも、沖縄を扱った観光雑誌には名物として取り上げられているくらいだから、沖縄観光の賑わい創出や特色つくりに一役かっているのだろう。
売り子さんがアイスを丁寧にコーンに詰め終えたようだ。150円と交換に、アイスクリンをひとつ受け取った。この値段でアイス玉二段というのは、やはりうれしい。
この沖縄のアイスクリン屋さん、道路沿いで販売を始めたのはいつごろからなのだろう。国道沿いのフェンスの記憶と同じように、私にとっては既に身近な風景の一部となっているのであるが、子供のころから妙に気になる存在ではある。正月気分も手伝ってか、売り子さんにアイスクリンの始まりについて尋ねてみる。少しはにかんで、よくわからない、との答え。
アイス一玉をなめ終わったころ、金髪の子供が、Yナンバーの車から勢いよく出てきてアイスクリンをいくつも注文している。「彼らも好きなのだなあ」
コーンに詰め終わるのを心待ちにしている少年を横に、歩道に立ち、道行く車からの視線を気にしつつ、アイスクリンを子供のようにベロベロなめながら辺りを見渡してみる。普段何気なく車で通り過ぎていたこの鉄条網のフェンス沿い風景に、なんというか改めて違和感のようなものを感じてしまう。さて、正月の車の往来で混み合う日本側の国道と、買い物客で混み合うアメリカ側の基地内ショッピングセンター駐車場に挟まれたこの歩道は、どちら側のものなのだろうか。
あれこれと想像を巡らせているうちに時間がたってしまったらしく、コーンの上にのっていたアイスクリンが溶けてしまい、その甘い汁が手のひらに滴り落ちる。ハンカチですぐに拭ったのだが、手のひらには妙なべとつきが家に着くまで残っていた。
いつかはフェンスのない風景を前に、爽やかに食べてみたい。(T)

 

新報リビングニュース週間かふう「うちなあ点描」