「地域の祭り・滲み出る生活感」
陽射しが益々強くなりつつあった今年7月末の日曜日、沖縄三大綱引きとも呼ばれ、400年以上続くという伝統行事「与那原大綱引き」に出向いた。
綱引き前の儀式でもある「道ジュネー」のため、国道329号線は交通規制され、大綱引きに参加しようという人々で賑わいをみせており、期待が膨らむ。どこかに車を止めようと、国道から少し入った与那原の細い道路が縦横に走る住宅街のなかを、ゆっくりと運転。ぐるぐると地域を2周半ほどしたところ、住宅街奥の道路沿いに車を止められそうな場所をようやくみつけた。
綱引き会場からは、鐘や太鼓の音が聞こえてくる。自然と早足となり、大綱引きの行われる会場へ進んだ。会場となる広場につくと、東西の大綱が、「かぬち棒」によりひとつになるところであった。陽射しの照りつけるなか、周りの声援や踊りと一緒になり、東西に分かれた大綱引きの観戦を堪能することに。広場にあつまった人の全員が汗だくとなったのではないかと思えるほど長くダイナミックな引き合いが続き、ようやく決着がつく。東西の勝敗以上に、清清しい顔が印象的であった。
帰る途中、早足で会場へ向かっていたときには、あまり気にもとめなかったが、細い通り沿いには、住宅敷地の一角や空き地を利用し、アイスやポップコーンなどを売る即席の屋台がいくつも並んでいた。屋台の道具には、傘をひっくり返したようなよくみる物干し、洗濯バサミにビニール紐、普段使っているであろう大小のバケツなどが利用されている。お品書きはもちろん手描き。気負いが感じられないというか、普段の生活感が通りに滲み出ているようで、なぜかホッとする。
それぞれの屋台で売っている人たちは、その住宅や敷地の主だと思うが、採算性というよりも、地域の祭りを底のほうから盛り上げようという心意気のようなものを強く感じた。大綱引きを支える地域の確かなネットワークを発見できたようで、なんとなく嬉しい。
地域を縦横に走る細い道路の両側には、小ぶりな鉄筋コンクリート住宅が並び、通りに適度な影を落としてくれる。建築が、汗を拭いつつ会場から帰る人々のために、屋台の冷やしものとともに涼しさを与えてくれているようにもみえた日であった。(T)
新報リビングニュース週間かふう「うちなあ点描」