(琉球新報 共に考える住宅デザイン2005/10/26掲載 )
「家づくりと雑誌メディア」
さして買いたい本がないときでも、気分転換を兼ね、自宅近くの某書店へはよく通っている。その書店は、多くの建築関連の雑誌や専門書を揃えてくれており、立ち読みするだけでも情報収集になるくらいであるから、電子メディアが発達した現在でも、仕事上の知識を得る貴重な情報源のひとつとなっている。
その書店に通う理由がもうひとつある。書店の各コーナーに、ところせましと並べられた雑誌や書籍の配置などから、家づくりを考える人の傾向が推測できるということだ。特に最近よくみているのは、それらコーナーのひとつでもある一般向けハウジングコーナーで、そこは専門家向け住宅関連コーナー以上に華やかであり、その雑誌や書籍の種類も最近特に増えつつある。月刊・季刊誌と思われるものだけでも、ざっとみて二十種類はあり、住宅ニーズの高さとともに、巨大な住宅産業の一端を垣間見ることができる。
近年、新築着工件数が減少しつつあるといわれる住宅産業ではあるが、例のリフォームブームも手伝ってか、「家づくり」に関する出版業界は盛況のようだ。この傾向は、様々な商品開発の重要なマーケットとして位置づけられてきたという団塊ジュニア世代が、三十代に足を踏み入れる時期と関係しているとよく聞く。以前、発行部数十五万部というハウジング雑誌の若い編集者と話したときも、主な読者ターゲットを全国の団塊ジュニア世代(特に主婦)に設定した上で新たに創刊する雑誌が増えているというようなことを聞いた。
それらの雑誌を実際に手にとってみてみると、カラフルな写真やイラストの他にも、具体的な資金計画、契約の方法、見積書の仕組み、専門家の選び方など、どれも家づくりの実例を通して丁寧に紹介されている。そして紹介される住宅のほとんどは、きらびやかなテーマのもとに、物語調に演出された家づくりのプロセスや住み手の暮らしぶりが綺麗にレイアウトされており、家づくりを全く考えていない者でさえ、読み物として普通に楽しめるような気がするほどだ。
主に東京から全国に発信されている、これら種類豊富なハウジング雑誌の多くは、書店やインターネットで手軽に手に入れることができ、役立つ情報も満載で、家づくりを進める際には貴重な情報源となりえる。ただ、地元新聞で特集されるような地元に密着したハウジング情報誌などにくらべると、なんとなく商品としての住宅という色彩が強く、どこかリアリティが薄く感じるところもある。
家づくりを考える際に様々な情報源があるということは、考える側にとって歓迎すべきことなのかもしれないが、なかには読者の購買欲を掻き立てるような表現などが散りばめられているものもみうけられると言うのは言い過ぎだろうか。ありきたりな言い方だが、家づくりにおいても、情報を主体的に解読する力(=メディアリテラシー)が、ますます必要となってくるような気がする。(T)