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「屋上の貯水タンク」

「屋上の貯水タンク」

「屋上の貯水タンク」

 水不足という言葉を最近あまり聞かなくなった。子供のころの記憶では、雨の少ない時期には、「断水注意報」なるものが恒例であったと記憶しているのだが、近年のダム・上水道の整備や、県民の普段の節水意識のおかげか、最近ほとんど聞かない。記録では、沖縄本島での給水制限は平成6年以降行われていないという。
ただ、水の心配がそれほどいらなくなった現在でも、住宅を新築する際には、とりあえず断水に備えてか屋上には貯水タンクを設けたいという人がほとんどだと思う。予算的な面や意匠的な面から、貯水タンクを介さずに、上水道管に直接繋げるという方法もあるのだが、水が屋上に貯まっているという安心感からか、だいたいの人は、屋上への設置を望んでいる。
だいぶ前に水道屋さんに聞いたところ、家庭の水道管を公共の上水道管に直接繋げた場合、地域によって差はあるが、2~3階までならなんとかなるので、断水時に風呂桶などに水を貯めておくなどの工夫をすれば、貯水タンクを設ける必要はないのではないかと正直な気持ちを話していた。ただ、シャワーなどを使う際の水圧については、感じ方に個人差があるため、やはり安定した水圧の確保の為には、屋上の貯水タンクは必要であるとも話していた。
その屋上の貯水タンク。沖縄の不思議として雑誌・テレビ等でよくとりあげられているように、沖縄を訪れる人にとっては珍しいものに映り、それが貯水タンクであると直ぐに分からない人がいまだに多いらしい。特に、初めて沖縄を訪れ、空港からモノレールに乗った人は、那覇の住宅街の屋上に建物とセットとなった無数の貯水タンクの群れをみて、とても新鮮な気持ちになるのだそうな。
材質では、強化プラスチック製、ステンレス製、コンクリート製などがある。形も様々で、花ブロックで周りを覆ってみたり、面白くペイントしてあったりと、みていて楽しいものも多く、観光客のカメラにも納まり易い。「角出し住宅」とともに、沖縄の都市景観をかたち作っているもののひとつなのだろう。
昔から水の確保に苦労してきた沖縄では、自然の雨水をためておく「天水かめ」を始め、貴重な水を確保する生活の知恵が多く生まれた。また、各地に数多く点在している「カー」や「ヒージャー」などの井泉(せいせん)の場は、祭祀の空間として使われてきたということからも分かるように、沖縄の集落は、井泉と密接な関係を保ちながら発展してきた。
ダム・上水道が整備された現在でも貯水に対する意識が強いというのは、県民の水に対する深い尊敬と信仰が背景にあるのかもしれない。そう考えれば、必ずしも設置する必要がないともいえる貯水タンクにこだわる人が多いのも頷ける。(T)

 

新報リビングニュース週間かふう「うちなあ点描」