「床と裸足のユニークな関係」
家の中では、冬の一時期を除き、ほとんど裸足(はだし)でいる。普段、外では靴を履いているので、家に帰ると習慣なのか開放感を感じるのか、すぐに靴も靴下も脱いで裸足になる。特に夏は、床面がひんやりとしていて気持ちがいい。
裸足で家のあちこちを歩くことを想像してみる。フローリングでは「ペタペタ」「ヒタヒタ」、畳間では「ササッ」「スー」などの擬音が、足の裏の皮膚感覚とともに浮かんでくる。家の中の床材には、フローリングをはじめ、畳、カーペット、タイル、土間、ビニール床など幾つもあり、擬音語もまだまだありそうだ。一方「コツコツ」、「トコトコ」といった靴をはいて歩く様子が浮かぶ擬音は、足の動きを通して地にぶつかっている感じがする。靴をはいていると意識が足の裏に集中しないためか、そのように感じる。
靴と裸足の関係を歴史的にざっと見ると、家の内外に限らず裸足で事足りていた日常生活が、文明が進み生活スタイルの選択肢が増えてくるに従い、防寒、保護、ファッションなどの理由から、さまざまな物によって裸足を覆う生活に変わってきたと考えられる。裸足の方が、靴を履いているときよりも気持ちよく感じるのは、もともとの土や石といった大地とじかに接していたときの太古の記憶が関係していると言っても大げさではない。
昔は、家の外でも年中裸足で元気に歩き回る子どもがよくいたと聞いたことがある。そんな子どもを見なくなった現在では、自由に裸足になれる場所が少なくなったのだろうか。仕事柄「気兼ねなく裸足で歩き回れる家に住みたい」という要望を聞いたときは、「掃除は大変でしょうけど、健康にいいですからね」とうなづきつつ、そんなことを思ってみたりする。
掃除のことを考えると、フローリングといった表面がツルツルした床材がいいに違いない。裸足であれば、足の裏から汗も出るのでなおさらである。なぜ、われわれはホコリがたまりやすい畳やカーペットを使うのだろうか。そこでの用途や演出性もあるのだろうが、全身のツボが集中し「第二の心臓」とも呼ばれる足の裏が、無意識のうちにさまざまな床の上を歩くことでツボを刺激し、内臓や脳を活性化させようとしているのかもしれない。そんな足元に広がる床と裸足の関係から、家づくりや日々の暮らしを考えてみるのも面白い。(T)
体感がヒント!(タイムス住宅新聞掲載)