(琉球新報 共に考える住宅デザインVol.147掲載)
「木陰のある駐車場」
夏日が続き、通りを歩く人たちを眺めていると、各々の方法で厳しい直射日光と年々増加している紫外線を防ぐ工夫を見かける。日傘や手袋などのサンシェードに紫外線透過量の少ない黒色の素材を用いたものや、頭部をすっぽり覆うような形状の帽子をよく見かけるようになった。男性よりも女性のほうがそうした日焼け対策を多くしているのは身体環境を守る感覚が男性のそれよりも強いのだろうか。
最近では景観と省エネ効果等が期待され建物緑化を採用する建物も増えてきている。熱容量の大きいコンクリートに生き生きとした植物が柔らかくカバーしている様子は建物が日焼け防止をしてもらっているようで見ていて楽しい。
この季節の強烈な日差しの中で、屋根の無い駐車場へ車を停め用事を済ませて戻ってくる際には熱せられたアスファルトの路面の歩行と車内での再運転にはエネルギーを使い、クーラーの効いた涼しい室内との温度差の変化で体調も崩しかねない。そこで車を停める時には木や構造物で日陰になっている所を探して停めるようにしている。
そうした事を計画段階から把握したのだろう、浦添市美術館の駐車場などは日差しの照り返しを防ぐ芝植用ブロックでのグラウンドカバーで照り返しを防ぎ、頭上で枝を這わす樹木が影を作りながら車の通行と駐車台数の確保とをクリアーする様に考えられて植えられている。車の行き交いの多い沖縄自動車道のサービスエリアでは柱の数を減らした木製のパーゴラに植物が絡み、見た目にも涼しい作りになっており日陰では涼しいこの地域の事をよく理解されてつくられている。民間駐車場でも白線引きの代わりに木を植えている事例もあり通りに潤いを与えている。歩道に植えられた街路樹も歩行者だけではなく、一時停車の車や隣り合う建物・駐車場へも木陰を落としてくれる。こういった積極的に木陰をつくる工夫をしている駐車場を見るとそれを作り上げた関係者の利用者への配慮が伝わってくる。
自動車社会の県内では駐車場はまちを形成する大きな部分を占めている。建物や道路も含めてそれぞれの部分での高いアメニティー(快適環境)の連なりが住みよいまちづくりに繋がっていくのではないだろうか。ただし、生き物である木の選定や剪定方法等についてはその土壌性質との関係もあるのでせっかく植えた木を枯らしたりしないように造園業の専門家と相談しながら住まい手のイメージに近づける工夫をしていきたい。(Y)