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「クロトンのある風景」

「クロトンのある風景」

「クロトンのある風景」

 沖縄の代表的な庭木のひとつに、クロトンという面白い植物がある。昔ながらの民家やお墓でよくみられ、どこか土の香りのする植物である。トウダイグサ科の常緑低木または小高木。
冬場でも色鮮やかであるためか、1年を通じ、観葉植物としても日本中で販売されている。ただ、沖縄では販売されているものというよりも、どこにでも生えているものといった印象が強いのではないだろうか。
またご存知のように、お墓や仏壇、そして火の神(ヒヌカン)によく供えられる植物でもある。一般に花を供えてはいけないとされている火の神に供えてもいいとされる花木であり、家庭を守ってくれる火の神へのお供えものとなるのと同時に、民家の台所に明るい彩りを与えてくれる。
葉の形状が卵型のものから細長く巻いたようなものまで変化に富んでいることから、別名ヘンヨウボク(変葉木)ともいう。また、色についても、赤、緑、黄色など、実に多様であり、面白い。マレー半島や南洋諸島などが原産とされており、17世紀に海を渡ってヨーロッパに広く知られるようになった。沖縄には1910年に、国頭農学校校長黒岩恒氏によって、シンガポールから3品種が導入されたのが始まりだという。その後も多くの品種がハワイなどから導入され、その面白い特性からか、多くの愛好家を持つ。また繁殖法も比較的容易で、品種を自由に組み合わせやすいことからか、現在では、県内だけでも150種以上あるといわれている。元々ひとつの種から枝分かれしていったものとされているが、現在の品種については多種多様であり、人間の個性と同じように、厳密には分類することができないとも。
家に住む人の個性は、その暮らし方はもちろんだが、家のつくりや見た目にも必ず反映されるものだと思う。太陽熱の豊富な亜熱帯の気候のもとで育つ、彩りのある身近な植物は、そういった個性の演出にも一役かっているのだろう。
沖縄の民家の通りを歩くと、いろいろな植え込みをみることができるが、クロトンのように、遠くの南洋からやってきて沖縄で根付き、そして自然体で存在している多くの植物の横を歩いていると、時空を超えた拡がりを感じるようでなんだか楽しい(T)

 

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