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「健康への配慮という住宅デザイン」

「健康への配慮という住宅デザイン」

(琉球新報 共に考える住宅デザインVol.151掲載)
「健康への配慮という住宅デザイン」

 最近、製造会社元従業員の職業病アスベスト被害の報道が続いている。報道のなかには、住宅を建設する際にも使用される、規制対象外アスベスト被害についても指摘もなされ、一般の家庭からは不安な声が聞こえてくる。
アスベストとは、石綿(いしわた)とも呼ばれ、天然の鉱物繊維の総称で、一本の繊維の太さは、髪の毛の五千分の一ほどと非常に細い。耐熱性や耐摩耗性が強いという特徴を持っている。また市場価格が非常に安いため、一時期は、「奇跡の鉱物」とも呼ばれ、工業製品を中心に、住宅に関連したさまざまな製品に利用されてきた。
しかし、ご存知のように、吸入すると石綿肺、肺癌、悪性中皮腫の原因となる。また、アスベストという語源が「消すことができない」というギリシャ語に由来していることからも、いったん吸入してしまうと、肺の中に長期間留まって二十~五十年後に病気に繋がるという皮肉な特性を持つ。よく「静かな時限爆弾」ともいわれている理由がここにある。自然界で分解されるのに非常に時間のかかるといわれるプラスチック製品の弊害と同様に、文明がもたらした環境問題のひとつといえるのかもしれない。
ところで、全国の検査機関には、アスベストによる健康被害が明るみになったことを受け、アスベストに触れる可能性の高い建築解体業者だけでなく、一般の家庭からの検査依頼も急増しているという。被害を伝える報道により、必要以上に不安になりすぎるのは考えものだが、人によっては少量の吸入でも発症に繋がるという例もあるらしい。
話は変わるが、その社会不安を悪用した、住宅改修工事をもちかけるリフォーム詐欺の被害相談が、国民生活センターに寄せられている。
写真現場は、規制対象外の安全な「ノンアスベスト(アスベスト含有率1%未満)」が耐火被覆材として使用されているという鉄骨造の立体駐車場内。表記では「ノンアスベスト」とされているが、含有率0%の「ゼロアスベスト」とは異なることから、アスベストによる人体への影響が全くないとは言い切れないのかもしれない。
被害への対策として製造側は、かねてからノンアスベスト製品やゼロアスベスト製品への移行の努力を進めてきており、かなりの成果を上げている。また、仮に規制対象(アスベスト含有率1%以上)のアスベストが含まれる建材が使用されていたとしても、一般住宅に使われているアスベストについては、飛散の可能性は低く、人体への影響は少ないという。ただ、住んでいる期間は安全だとしても、新築や増改築工事、そして将来の解体工事に関わる工事関係者や周辺住民の健康を害することになりかねないので、その安全性が確認できないのであれば、なるべく使用を断ったほうが賢明だと思う。
住宅デザインを考える際、このアスベスト被害に限らず、住む人や工事関係者の健康を害する建材などへの注意は、建て主、作り手共に怠ることはできない。(T)

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