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「建築とまちづくり」

「建築とまちづくり」

(琉球新報 共に考える住宅デザインVol.133掲載 )
「建築とまちづくり」

 ネットを散策していたら、23年前に沖縄で開催された「都市と建築と彫刻と」と題されたシンポジウムに関する文を偶然みつけた。そこから、都市計画家、建築家、アーティストの方々の、まち並みや、公共の建物や造形作品の可能性についての熱心な態度が強く感じ取れた。と同時に、文化創造に対する自らへの自戒と行政側の課題(例えば、「作品を発表する公共の場の少なさ」、「作品や公共建築が為政者の選挙向けの誇示活動に利用されている」、「アーティストを建築界で行われている営業活動に引きずり込む危険性」)などが指摘された。
人間の営みとしての建築行為が個人やその家族だけに限定されたものではなく、まち並みや都市、ひいては地球環境までに作用することはなんとなく感じていた。そうした折、建築士会沖縄市支部の会員の方から「沖縄市のまちづくりのために、なにか面白い企画をつくれないか」との話があり、さっそく、前述した「都市と建築と彫刻と」のなかで指摘されていたことを思い出し、作家が作品を発表できる公共の場を増やせないかと、県内外の造形作家を対象とした公募展を提案した。その後、関係者や専門家の意見を聞きつつ、実際に設置可能な造形物の案(高さ2m程の立体造形物)を募ることとなったその公募展の名称は、沖縄市職員の意見を参考とし「~みなとと芸術~立体造形アートコンペティション(主催:沖縄県建築士会沖縄市支部、後援:沖縄市、審査方法:市民投票)」となった。
募集をかけた結果、県内外から計10点の応募作品が事務局に届けられ、市民投票を兼ねた展示会が沖縄市内の2会場で同時に行われた。展示会場を訪れる人のなかには、「どれも設置してほしくない(沖縄市在住の主婦)」、「こういうことに予算を使うくらいなら、もっと雇用の機会を増やすことに努力してほしい(ハローワークを訪れた男性)」などという、厳しい意見も聞かれたが、大半の市民は、内容を話すと理解を示してくれ、展示された各作品案を興味深そうにみてもらい、投票もしてくれた。
まちなかに置かれるアート作品が、社会性を持った市民に愛されるものであるならば、市民がまちを身近に感じ愛着を持つことのきっかけになるのではないか。ただ、アート作品に、無理やり社会性を持たせるということは本末転倒であることはいうまでもないことだが。
美的に優れた広場に設けられる壮麗な造形物や、まちなかに人知れずポツンとある正体不明のアート作品の存在。それは、私たちが普段、和室の床の間などに花や絵を飾り、それをたまに眺めたりすることで、何気に生活を楽しくさせてくれることと通じるような気もする。(T)